初代Oculus Quest から Quest3 へ乗り換えて何が変わったか

初代Oculus Quest(2019年5月~)に出会ったときの感動をQuest3(2023年10月)はアップデートできるでしょうか?
Quest3へ買い替えた初代Quest のユーザーの率直な感想です。
発売から2週間経ち、製品のスペックや画面キャプチャなど情報は多く出回っていますので、Quest3の概略については既にご存知であることを前提にさせて頂きます。

結論から言うと

◎ 改良が積み重ねられて格段に使い勝手がよくなった。
✖ 初代Questのような真新しい体験に出会う衝撃はなかった。
可能性を感じるが既存ユーザーは飛びつく前に買い時を冷静に考えた方が良い。

です。
どういうことか、以下に説明します。

購入の動機

ソフトの動作条件から初代Questが外れつつあり、いつまで使えるか不安になってきたのが買換えの一番の動機でした。デスクトップPC(グラボはRTX3060)から Qculus Link(USB-C)を使って視聴デバイスとして使う分にはもうしばらく行けそうに思いましたが、Quest3が出たことでQuestの気になっていた以下の点が喚起されてしまったこともあります。

・着脱時の不便さ

いわゆるMR的な表示は白黒低解像度ながら最初からあって部屋内の位置を確認したりコントローラーを見つけたりは出来ましたが、何かと着脱が必要で、外すのは一瞬ですが装着は都度フィッティングし直すので面倒でした。億劫だからちょっと額にずらして肉眼で見ようとすると、すぐにずり落ちてきます。
ゴーグルに付いているスイッチ類がゴーグル装着状態で手探りしづらくイラっとすることも、着脱のわずらわしさを掻き立てました。頭部をサポートするストラップはよくできているだけに残念なところです。

・画質の粗さと滲み

画面をよく見ると昔のブラウン管テレビのような網目感があって、時々鼻周囲の隙間から入る光がフレネルレズで同心円状に滲むのと重なって、粗さを感じるときがありました。

・奥行き調整が不便

老眼が入ってきているのでその日の眼の調子によって楽なピント面が変わります。奥行き方向はスペーサーありなしの選択なので目が疲れてダメな日がありました。

・不安定なジェスチャー操作

コントローラーなしのジェスチャー操作も使えますが精度が悪すぎて実用的に感じられなかった(コツが掴めていない、慣れの問題かもしれませんが)。
ちなみに、コントローラーに電池を入れっぱなしにするとすぐなくなるので都度外していましたが、電池カバーはマグネットで着脱しやすいのに、中の電池はペン先などを差し込まないと外せないイラつきがありました。

ルックアンドフィール

製品の見た目が大きく変わるのは販促上は重要ですが、実用面でそこに大きな違いを感じるかは別問題。
本体が薄型化して扱いやすくなったのは間違いないが、初代Questはストラップがしっかりしているので、私の場合は装着してしまえば負担感はあまり違いません。むしろQuest3のヘナヘナしたヘッドバンドは安定感が悪く、オプションのストラップを買う必要がありそうです。オプション付けると机に置いたときのサイズ感がQuestと変わらなくなるので、単に本体が小さくなってもトータルで考えないと騙されるところです。

本体にあるスイッチやコネクタは手探りで簡単に見つかる形状・配置になりました。装着したままブラインドで操作できます。眼から画面までの距離もゴーグル内で奥行き調整可能になりました。これらは見た目にはアピールしないが大きな改善です。

コントローラーはリングがなくなってパッと見ですっきりし、置いたときのかさばり感はなくりました。

電池の着脱も改良され、カバーがマグネット式ではなくなりましたが、他の道具なしに電池が抜けるようになりました。元々、リングがあってもなくても使用中に意識することはほぼ無かった一方、電池は毎回イラっとしたので、電池部分の改良のほうが有難みを感じるのがプロダクトの難しいところ。

ちなみに製品の梱包箱も大幅に小さくなりました。メーカー的には在庫スペースの効率UP、1つのパレットに積める数が増えて輸送コストDOWNで良い事づくめ。個人的にはそもそも箱をとっておく人は他にもたくさん箱を抱えているのでまあ少し嬉しいけど特筆することでもないです。

左側がQuest3、右側が初代Quest

映像品質

スペック詳細は省きますが、画面解像度等に関してはデジカメ風に言うと QuestからQuest3では片目 230万画素から456万画素と2倍になっています。かつフレームレートも上がるので画像処理能力は数倍高くなる必要があるわけですが、明確に綺麗になっています。

Quest 230万画素 = 1,600 x 1,440 / 72Hz~ FOV水平垂直90度
Quest2 352万画素 = 1,832 x 1,920 / 90Hz~ FOV水平垂直90度
Quest3 456万画素 = 2,064 x 2,208 / 90Hz~ FOV水平110度/垂直96度

ちなみに、フルHD動画の画素数は 1,920 x 1,080 で約200万画素、4K動画は 3,840 x 2,160 で約830万画素ですので、フルHDと4Kで見る動画の違いは4倍もの画素数の違いが生み出しています。

Questの2倍は確かに大きな違いですが、フルHDと4Kほどではなく、SVGA(48万画素=800×600)とHD(92万画素=1280×720)くらいの位置付けです。ゲーム性が大きく変わるか?と言われると、新旧を比較しない限りそうでもないんです。ただ、Quest3を使ってからQuestに戻ると、液晶TVからブラウン管に戻ったような感じがします。
一旦映画の中に没入しちゃうと画質云々は気にせず時間が過ぎますが、観る前のモチベーションが違うように、やっぱり映像が美しいほうがソフトも買う気になるしやりたくなりますね。ここはデジタルカメラなどと同じで、もう十分な性能になっているのに、ひとたび新型と使い比べてしまうと、新しい方がモチベーションを喚起するのは電子機器の常です。
起動や切替えのレスポンスなど、デジタル機器としても4年分の違いは感じます。まあ、4年前のiPhoneも十分使えるけどというのと同類の話です。それでもこの違いは、毎週長時間ゲームをするヘビーユーザー、あるいはメタバースに住みたい人なら、乗り換えない理由はないと思うでしょう。
(もっともそういう人は先に Quest Pro に行っているでしょうけど)

Quest2までのフレネルレンズは同心円状の構造に光が反射すると筋になって滲む
Quest3は薄型レンズの採用で滑らかな光沢になり、コンテンツは大変見やすくなった

Quest2までのフレネルレンズ(写真左)は同心円状の構造に光が反射すると筋になって滲む。Quest3(写真右)は薄型レンズの採用で滑らかさが光沢で分かる。コンテンツは大変見やすくなった。

MRの機能

Questは最初の製品から、ガーディアン(プレイで移動可能は範囲)への入退出やその設定プロセスで外界とCGを重畳表示しており、ユーザーはMRがどう見えるのかは「予習体験」済みです。
Quest3では解像度が上がりかつカラー化したことで「装着前に見ていた部屋の景色が、装着した瞬間にも引き続き見える」ように感じられる(画角も明るさもほぼ同じに表示される)のは、想像の範囲内ながらも嬉しい驚き、という感じだと思います。着脱時に仮想空間と現実との境界を容易に行き来できるようになりました。
装着直後の状態に対する心の準備をして、ちょっと気力が必要だったのに気楽に手に取って着脱できる、心理的なハードルが下がった効果は素晴らしいですね。

ミラーレス一眼のファインダーを覗くと当然ながらそのまま正面の部屋内が見える
Quest3の映像もあたかも眼鏡をかけるように正面の部屋内が自然に見える

プリインストールのデモゲーム では自分の部屋に出発地点の装置が現れ、それを操作して仮想世界に入ることでゲームが始まったり、自分の部屋の中にオブジェクトが現れることでゲームをします。なるほど面白いのですが、自分の部屋がコンテンツになるサプライズは初回だけで、毎回同じ部屋ですし(わざわざ部屋を変えて遊びません)自分カスタムな部屋パターンが1つ増えるとしても私はデザイナーさんがアイディアを練った部屋コンテンツで楽しめれば良いです。
今はまだMRの可能性を示唆している段階で、これ以外あり得ない的なMR体験を提供するアプリケーションはもうしばらく待つことになります。

ハンドトラッキング

前方カメラ・センサー構成が高度になっているので、確かに精度上がったと感じます。
但しこれも用途次第であり、娯楽ではコントローラー必須なソフトが多いし、何と言ってもコントローラーは手のひらに振動のフィードバックがあるので、素手で出来ることの快適性のほうが勝って感じられるケースが意外と多くはない。
娯楽性を追求する上ではフィードバックの重要性が高いので、ハンドトラッキングはリモートミーティングなど実務性・効率性を求める用途がメインになるはずです。
そうした用途が自宅ワーカー含めて職場に拡がるのは、ネットとPCとビデオ会議が浸透した次の段階、まさにこれからですね。

ふたたび結論へ

以上のことをターゲットユーザー別に言い換えてみました。

VR/MRに関心がない人

不要です。会社支給のPCのように将来ゴーグルが支給されるようになったら始めましょう。

はじめてVRゴーグル購入検討中の人

Quest3はうってつけのデバイスで、大きな感動を味わえるはずです。円安影響下で値段が高いのが残念。

初代Questユーザー

Questで使えないソフトが増えていくので環境継続のため乗り換え時でしょう。結果的に大幅に使い易くなります。

Quest2ユーザー

今のソフトを楽しめているなら、最新モノに飛びつきたい人以外は、Quest3ならではのソフトが増えてから考えても良いと思います。

ハイテクオタク

既にQuest Proを体験済みでしょうが、友人知人に紹介して仲間に引き入れるチャンスでしょう。

因みに、自分は開梱当初は「やっちまった~」と思ったのですが、繰り返し使うにつれて、格段に使い易くなったこと・画質が良くなって気持ち良いことを実感し、入手して良かったと思っています。

最後に

「小さくなった、スペックが上がった、MRがスゲー」と新製品礼賛が多いなかでコンサバな感想に思われるかもしれませんが、期待への裏返しでもあります。
三十数年前に私は訓練用シミュレーターの模擬視界映像システムの開発に携わっていました。あの頃、リアルタイムCGによるVR実現は憧れ夢見つづけた未来でした。それが初代Oculusの登場によって個人が自宅で手軽に体験できる時代が来てしまいました。
リアルタイムCGと6DOFをスタンドアロンで実現しかつ初めて使う人でも秀逸なUIにガイドされる体験はまさに衝撃的でした。これまでのゴーグルでは出来ない新しいMR体験がこれから続々出てくるでしょうし、大いに衝撃を与えてくれることを期待しています。
それは番号を繰り上げた Quest Nではなく名前が変わる時かもしれませんね。

本当にこれからが楽しみです。

以上


Meta Quest公式サイト

Amazonのレビューなど

Meta Quest 3 128GB

2023年10月末現在、品薄のようで納期3週間くらいの様です。

Meta Quest 3 Eliteストラップ

少なくともQuest3標準のゴムバンドでは初代Oculus Questの装着安定感に劣っている。
オプションのストラップは何らか必須になりそうだが、やたら高い。サードパーティー製品でも探した方がゴムバンドのままよりは良さそう。悩み中。


追記:2023年11月4日 ストラップ交換しました報告

[Lucktree] Oculus Quest 3 / Meta Quest 3 用 ヘッドストラップ

Quest3標準のストラップはただのゴムバンドなので装着のたびにひと手間かかり、せっかくの本体グレードアップが台無しでした。
初代Questのストラップは貧弱ながらもワンタッチでかぶれる形状をしており、それで十分だったので、廉価なサードパーティ製品から本品を購入してみました。
後頭部サポートを上にはね上げた状態でゴーグルを顔に当てて、ストラップをカパッと下すだけで一瞬で装着でき、きわめて快適になりました。ゴムバンドでなければどれを選んでも正解かもしれません。
ご参考までに。
(商品サムネイルには写っていませんが、頭頂部に薄いバンドがあたって止まります)

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