スライドショーで観るスナップ写真の薦め

長年とり溜めた写真から久々にスライドショーを作る機会があり、素材のスナップ写真の今昔をみていて改めて思うところがありました。
スライドショーで楽しむためのお勧めのスナップ写真TIPSです。

アルバムを開いて懐かしむ時代から映像で楽しむ時代へ

前職で写真カメラの仕事をしていたこともあり、何かにつけて「撮る」のが好きです。その撮った写真をプリントして配る習慣は2000年代に入って激減していき、データで渡すようになって久しいです。
今はみんなスマホを持つので、個々の写真はいつでも簡単に画面で見られます。意図をもった編集行為は昔はアルバムを作ることでしたが、いまのそれはスライドショーではないでしょうか。

フォトブックを作るという選択肢もありますが、かかる労力や費用、何より「物」としての特性はプライベート向きで共有には向きません。
データで送ることができて、大画面に映して大勢で視聴できるスライドショーが、ストーリーをもつ写真アルバムの現代版といえましょう。

数年前まで私は何かのイベントに参加するたび写真を撮りまくって、スライドショー化してシェアするのが楽しみの1つでした。

久々に作ったスライドショーのこと

しかしスライドショー化は結構エネルギーを使う作業なのと、最近はコロナ禍もあって撮影機会も減り、すっかりやらなくなっていました。
そんな中で先月、久々にスライドショーを作る出来事が2度ほど巡ってきました。
1つは年初めに義母が亡くなって追悼写真のまとめ、1つは馴染みのバーの20周年記念での振り返り映像でした。
こんなに長い年月に渡る写真から抜粋してスライドショーにしたのは初めてだったかもしれません。

<その1>

義母の葬儀では写真データを業者に送るとDVDにして式場の待ち時間にロビーのモニターで流してくれました。今はこういうサービスが普通なんですね。

妻と結婚する頃からは私が撮った義母の写真がデータになっていて、写真フォルダを30年分程さらって候補写真を集めました。それ以前のものは昔のプリント(私も始めて見る写真)を預かって自宅でスキャンし、全部で60枚ほどに厳選しました。昔の写真は枚数も少ないのでさほど苦労しません。

数十年に渡って並べると(画質云々はさておき)昔の写真はあそびというか無駄写真がない。撮る場面を絞り込んでいるので良くも悪くもワンパターンなんですね。
でも時系列で時代感が変わっていく面白味はあって、トリミングでちょっと変化を付けたり、少ない枚数の中にも気張らないシーンを挟むことで落ち着いた追悼映像になりました。

昔の写真は1枚1枚が貴重で正面写真が多い。昭和20年代。
在りし日の自然な1コマが思い出を呼び起こす。
孫に手を引かれる地味な一枚も後になれば貴重な一枚に。これが最後のエスコートだった。

<その2>

最寄り駅近くの馴染みのバーが20周年を迎えました。
私が行くようになったのは2005以降。ジャズのライブなども時々していて写真もよく撮らせてもらってたので17年分の写真フォルダをさらって150枚、10分の映像にしました。

フィルムの頃はそういうシチュエーションで撮りませんしスマホのカメラの普及は2010年代。お店の初めの頃の写真はほとんどなく、2009年に一度移転しているのもあり、行き出した当時にコンパクトデジカメで撮っていたのが懐かしの映像となりました。現像代がかかるフィルムと違ってデジタルで惜しげもなくたくさん撮っていたのも素材選択の幅を拡げてくれました。

記念日にお店の大画面で他のお客さんたちと飲みながら視聴。
何周見ていても飽きない、楽しい、と好評でした。撮っていて良かったなと思いました。
ちなみに、気になったシーンで(元データがありますよ、と言っても)大きなモニターをスマホで撮る若い人もいて、データの入手よりも体験としての楽しみ方になっているのが面白かったですね。

移転前のお店、いろんな視点から撮ったのが良い記念に。
ちょっとしたイベントの小物もいろんな記憶を呼び起こす。
新しいお店の始まり。

3・3・3のルール

何度もスライドショーを作ってきた中で、見やすいコンテンツにはバランスがあり、私が作るときに意識する点があります。
特に想い出の写真を順番にトランジション(画像の切り替え効果)で再生していくオーソドックスなスライドショーでは有効な経験則だと思います。

「一枚3秒台」

トランジション(画像の切り替え効果)含めて一枚あたり4秒程度(実質3秒台)にしたいところです。

テーマ的にBGMを先に決めてたり、時間配分の都合で再生時間の目安が先にあったりすると思います。飽きずに集中できる長さとして音楽1曲の長さというのはリーズナブルだし、枚数が多い場合でも10分くらいが上限でしょう。

 再生時間=秒数x枚数  例)4分=4秒x60枚

枚数が多いと1枚あたりの画像表示時間が短くてせわしなく、長いと間延びし枚数も少なくなります。 今時のカット編集で切り詰めた動画コンテンツや倍速視聴に慣れた人が増えると、好ましい間隔は変わってくるかもしれません。 

「連続3枚まで」

はっきりしたカメラ目線の写真は連続3枚までにしたいです。

クローズアップや並んでピースの写真が続くと目を合わせる時間が長くなって疲れます。
人物写真であれば撮られていることを意識していない自然な様子や横顔、後ろ姿など、種類の違う写真に切り替えます。
時々人以外のモノ(料理や小物、風景など)を挟むことで重くなるのを避けられます。
遠近もできれば変化をつけたいです。

「3種類の変化」

前項の補足になりますが、人、景観、モノ、など最低3種類の写真があれば変化をつけられます。

人のアップとグループ写真を往復するだけの変化が乏しい映像はすぐ飽きます。
短い視聴中にも濃淡、息抜きが必要で、素材にバリエーションがあれば適度にちりばめることで、ご飯、おかず、箸休め、のように飽きずに最後まで楽しめます。

顔写真の間に綺麗な花や美味しそうな食べ物などがあると効果的です。
クレショフ効果(同じ表情でも直前の映像の印象によって違った感情に見える)と言えるかもしれません。

ルールというには大げさですが経験者には共感頂けるのではないでしょうか。

補足:編集は凝らなくてよい

アプリによってはテンプレートを選ぶだけで1つの画面に何枚も組み合わせて大小表示する凝った演出を自動でしてくれるものがありますが、意図せぬトリミングされたり(上下や左右が切れる)、写真の位置関係をどうしても変えたかったりが発生し、確認と手動調整にすごく時間と労力がかかります。一時期使っていましたが、結局は、無理せずにできるオーソドックスなスライドショーに落ち着きました。

写真を選ぶ、順番を決めて並べる、必要な設定をする、言ってしまうとそれだけですが、最初はつい渾身のベストセレクションで作ろうとしてしまいます。

でも、強い写真ばかり集めて映像にすると密度が濃すぎて疲れます。(フォトブックにレイアウト編集するときも同様なことがあります)

つなぎに混ぜる意外な一枚一枚が作り出す緩急によって思い出の映像が胸に刺さってくるんです。

スライドショー時代のスナップ写真

24枚撮りフィルムで現像や同プリにお金がかかった時代は気軽にシャッターが押せなくて貴重な1枚を集中して撮りました。
色んなものを気軽に撮れないから古いスナップ写真は正面顔で似たパターンになりました。それもまた時代感で良いですが、大きなアルバムに切り貼りすることで完成するフォーマットだったのかもしれません。

そのアルバムが果たした役割は今はスライドショーになっています。
映像化する楽しみを前提にすると、日頃の生活写真のスナップ写真でのお勧めが見えてきます。

  1. 人物はカメラ目線ばかりでなく、何気ない横顔や後ろ姿、離れた場所からなど様々に撮ろう
  2. 人だけでなくその時その場で目に映る様々なものに気付きをもって撮っておこう

家族、友人、地域のコミュニティ、遠い知人、旅先、散歩道、いろんな機会でたくさん撮りましょう。
笑顔でピースの記念写真、インスタ映えするスイーツ、そういうベストショットだけでなく、失敗したブレ写真等も含む多数の「その他のショット」の中にも大事な思い出の断片がちりばめられています。

自動編集のその先

ところでたくさんの写真の中から映像に使うものを選び編集する作業はとても大変です。
一年分の写真から自動で選んでアルバムを作るサービスも登場しており、より高度な選択と編集をAIが自動でしてくれるようになるのは確実でしょう。
ひょっとしたら、撮り損ねたであろうシーンの写真を自動生成して紛れ込ませてくるかもしれません!

見る人が見たいもの、が提供されるならそれが実写でなくても感動できるでしょうか?

たとえ撮ったことすら忘れた1枚であっても、そのシーンは記憶のどこかに眠っています。
写真はその記憶のページをいつか開くための付箋のようなもの。
人はその写真が呼び起こす記憶を映像として見ているのではないでしょうか。

だとすると生成した映像で感動できるのか、想像力は思い出を上書きできるのか、考えだすと興味は尽きません。
そんな世界も見てみたいような、恐ろしいような・・・

撮っておいて良かったと思える限り

その時のベストショット以外のなかに、後になって、撮っておいて良かった、が出てくるのがスナップ写真の良さだと思います。

8年前になりますが私の9歳下で子供のころ私と弟にくっついて末弟のように遊んだ従弟が急逝しました。
独身で両親と都内で暮らしていたのですが、おうちに遺影にしたい写真が見つからず、急遽私の写真データを10年ほど遡って探し、親戚らが集まる少ない機会に撮っていたスナップ写真から抜き出しました。
彼のスマホかクラウドに写真があったかもしれませんが急なことで家族が開けられず、デジタルゆえの不便な一面もありました。
その10年分から彼の写真を抜粋してポケットアルバムにし叔母に渡すととても喜んでくれました。病気がちとは聞いていたけど急なことで何もできなかった私には僅かな救いでした。そんな時のために撮っていたわけではありませんが、撮っておいて良かった、と思います。
義父、義母のときの遺影も私のスナップ写真からとったものでした。

そんな「撮っておいて良かった」と思えることがある限り、私はちょっとした機会あるごとに気軽に撮り続けることにしています。

以上


心はこうして創られる 「即興する脳」の心理学 (講談社選書メチエ) ニック・チェイター

人が感情を思い出す仕組みは、記憶の再生ではなく、断片的な情報をもとにその場で感情を作り出しているのだそうです。つまり、思い出とは想像力だという。
そうだとすると、投稿で書いたようなAIが生成する代替画像で感動できるか?という問いに対しては、原理的にはYesとなる。
そうなったとき、写真を撮る意味は変わるのだろうか。

クレショフ効果についても解説されています。

スライドショーで観るスナップ写真の薦め” への2件のフィードバック

  1. 3・3・3のルールとは面白いタイトルですね。
    特に、トランジション含めて、一枚あたり4秒というのは、すごく懐かしい要求仕様でしたwww。
    当時の事を振り返ると、4という数字には日本人としてすごく違和感があったのですが、実際にスライドショーで再生してみると、3秒だとちょっと早いし、5秒ではちょっと遅いしで「なるほど!」と思った次第です。

    スライドショーですけど、最近は意識して考えたことはありませんでしたが、ふと考えてみると当時考えていたスライドショーから進化した(今風で再検討した方が)機能提案が出来るのではないか?と思いました。
    パッと考えても、既存のクラウドストレージにあるオススメ写真のスライドショーもあまり進化が無い気もしましたが、表示方法は各SNSにあるストーリーと変わらずで、微妙ですが進化はしている気がします。
    スライドショーを見たくて、写真を保存管理している人は少ないかもしれませんが、そこは今時のAIを駆使して色々な変化(AIアバターとか)なども楽しめたら、良いのかもしれません。

    1. コメントありがとうございます。
      プライベートコンテンツを素材にしたエンターテイメントを、今時の技術で作り出す新しい提案が出来ると面白そうですね。
      ニュースも娯楽もタイパ重視で倍速視聴するようになってしまった忙しい現代人にとって、立ち止まって癒しになるものなのか、更にタイパを極めるものなのか、空想力が追いつきませんが。。
      学生の頃(すでに何十年前の時点で)、ヒット曲のテンポが時代と共にどんどん早くなっている、と言われていたのを思い出しました。

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